日と月と星の譚歌

(アイスレジェンドの三部作コラボを見て思いついた駄文だよー)



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あるところに、ひとりの旅人がおりました。旅人は輝くばかりに見目麗しく、またとても人好きのするたちでしたので、どこへ行っても人気者でした。
ところがふしぎなことに、昼のあいだにこの旅人を見た者がおりません。夜のとばりの乙女がその黒い衣をひるがえし、地上をしずかに舞いそめるころになって、いつのまにか町の酒場に、また村の祭りに、かがり火のなかに、かれはその姿をあらわすのでした。

じつは、この旅人は日輪の王だったのです。いつも御身があまねく照らす昼間の世界しか見たことがなかった日輪の王は、夜の世界をこっそりと見てみたく、夜のとばりの乙女の後について、そっとその身を人にやつして降りてきていたのでした。
日輪の王はたちまち、夜の世に、人びとに、夢中になりました。王の目には、夜の人びとは昼間よりもずっと魅惑的なものにうつりました。かれは昼間の威光を忘れ、夜になるたび、一夜かぎりの恋に落ちるのでした。
そうして今夜もまた、ある国の舞踏会に旅人はあらわれました。舞いおどる人びとのさざめきの中にまぎれ、いつものように愛の言葉をささやく旅人でしたが、人びとはもう心に決めた相手がいるのか、なかなか旅人の誘いにはのりませんでした。
そんな中、旅人をじっと見つめる乙女がおりました。そのしろがねの光のような清らかな美しさをたたえた乙女は、旅人のことをずっと見つめてきた、月の姫君でした。

夜の月と日はそれぞれ裏側の世界にあり、また昼間の王はだれもその姿を見ることができぬほどの威光をまとっているため、姫君は日輪の王の姿を知りませんでした。ただ、夜になるとあらわれる、ふしぎな美しい旅人の姿を見つけ、いつしか恋に落ちてしまったのです。
そうして、姫君は人の乙女の姿となって、旅人の前にあらわれました。旅人もまた、その乙女の、いままで出会ったことのない美しさと清らかな思いにひかれ、ふたりはたがいのまことの姿も知らぬまま、たちまち恋に落ちました。
恋するふたりはとても美しく、ふたりが舞うとあたりには祝福の光が舞い散るようでした。まるで世界はふたりだけのためにあるようで、このまま朝がおとずれたとしても、日と月はともに空に輝いたかもしれません。
そこに、ひとすじの流れ星のように、なぞめいた若者があらわれました。夜の色の髪、たそがれの色の瞳、夜明けの色の衣にきらめきをまとったその姿を、旅人はわれしらず目で追ってしまいました。そうして目が合ったが最後、もはや旅人はその若者しか目に入らなくなってしまったのです。

じつは、この若者は星々の王、明星でした。みずからが知るたそがれや夜明けの世界とはまるで違った輝きを地上に見つけ、それにひかれて人の姿となって降りてきたのでした。
こうして旅人と若者もまた、まことの姿を知らぬまま、恋に落ちました。旅人は愛を誓った乙女の手を離し、いつしか若者とともに舞っていました。それもまた、旅人にとっては夢のような幸せなひとときでした。
乙女は、そんなふたりのようすを見ておどろき、そしてなげき悲しみました。それを見てようやく、旅人はわれに返りました。
ここで、旅人は何と言ったのでしょうか。

「遊びだったのだ」
「つい魔がさしたのだ」
「誘惑されたのだ」

それは、誰にもわかりません。ただ、その言葉は乙女にも、若者にも、不実なものだったことだけはたしかです。
若者はーー星の王たる明星は、その言葉を聞くなり、旅人に失望して遠くへ去りました。こうして夜空は星々を失いました。
乙女ーー月の姫君もまた、目の前で裏切った旅人をゆるすことができませんでした。姫君の悲しみはやまず、その身はどんどんやせ細り、ついに夜空は月を失いました。
月も星もない闇のなかで、日輪の王はみずからのあやまちですべてを失ったことを知りました。絶望のはてに倒れた王のなげきはやまず、そして朝はいつまでたってもおとずれませんでした。


おしまい



( *´Д`)   わたしだ>(゚◇゚*)

( *´Д`)<お前だったのか (゚◇゚*)

( *´Д`) 暇を持て余した>(゚◇゚*)

( *´Д`)<神々の    (゚◇゚*)

( *´Д`*)<  遊び  >(*゚◇゚*)