オッスオラ福島県民、普通に生きてる福島県民

こんばんは、ふくすま県民です。今回はこの記事を読んで思ったことなどつらつらと。



この記事にある通り、確かに県内の「普通」「当たり前」が県外に全く伝わっていないなあと実感することはよくあります。例えば関東に住む友人が福島に来た際、彼女は駅前や公園などに普通に存在するモニタリングポストが何なのかわかっていませんでした。

「あれは放射線の数値を測ってる機械な、犬も歩けばモニタリングポストに当たるってぐらいそこらじゅうに普通にあるよ」
「低っ!数値低っ!!」
「あと毎日天気予報のついでに各地の線量も発表してるよ」
「そういうのこそ全国でやればいいのにー、全国で比較すれば差がないってわかるのにな」

そんな会話をしつつ酪王カフェオレを飲み凍天を食らいました。


そう、これ。福島に住んでると、モニタリングポストも天気予報のついでの線量も、米の全袋検査も漁の試験操業が順調なことも、あまりに当たり前の日常すぎて、あえて「福島ではこういうことやってるよ」と発信することすら思いつかないんですよね。あまりに普通のことだからみんな知ってるような気がしてきちゃう。
だから、県内では情報は常にアップデートされてるんだけど、県外にいるとよっぽど自分から興味を持って調べないと6年前の情報のままで止まってるのも当然のことです。止まってるならまだマシな方で、今度は調べたら調べたでネットはデマの洪水だもの。そりゃ齟齬があって当たり前だよなあ。

これ自分にも経験があって、震災後、3月なかばから4月の頭まで一時的に都内に行ってたんですね。当時は食べ物ねえ!ガソリンねえ!店も全然開いてねえ!という状況で、いかんこれではジリ貧だ!とパニックになってワーッと都内に避難したわけです。常磐道ガタガタで使えないから会津・新潟経由で。
で、都内で見るテレビといえば毎日毎日原発やばいよやばいよって話で、あと地元の様子が映ったと思えば「ご覧ください、ゴーストタウンです!」だもの。そりゃーうんざりしますわ。帰りたくもなくなりますわ。
当時は浅草のビジネスホテルに福島避難者割引ってのがあって(その節はありがとうございました、大変助かりました)泊まってたんですが、お金もないので下のコンビニに食べ物買いに行く以外はずっと部屋から出なかったんですね。そんで無料で部屋に届く(前日の)全国紙の新聞読んで関東キー局のテレビ見て何がデマで何が本当なのかもわかんないツイッター見て、って生活だったのでかなり鬱になってたんです。でもある日、コンビニ行こうとしたらすごくあったかくていい天気で、あーそういえばここは浅草だ、浅草寺にでも行こうかな…とぶらっと外に出たんですよ。
そしたらさ、なんか人がいっぱいいるの。普通に観光してるの。外国人もいるの。あ、あれーーー??なんか普通だ!テレビであんだけ毎日暗い話題やってたけど、なんか、外は、普通だぞ???いや震災前の盛況時に比べたら少ないのかもしれないけどこちとら田舎者だからね、それでもすっげー!人いっぱいいるー!ってなるわけよ。そんで空は晴れててなんかいい気分になってきて、よっしゃーお参りだー!って東北の無事と今後の発展を祈って、おみくじ引いたら大吉なの、大吉!なんか聞いたら浅草寺の大吉って少ないらしいね!?うおーやったー!よーしこの運勢を更に固めるべくお守りも買うぞー!あっ財布に小銭いっぱいある!募金だ募金だー!東北に募金だーーー!!(むんずジャラジャラー)

てな具合に非常に気分良くホテルに帰って、そしたらタイミング良く常磐道の高速バスが復活してるとの情報が入ってきたので次の日だったか次の次の日だったか、そこらへんに福島に帰ってきました。いやー天気良くてよかった。浅草寺に人がいっぱいいてよかった。おみくじ大吉でよかった。そしてそんなことで前向きになれるほど俺が単純でよかった。ありがとう!俺の単純な脳!!

でさー帰ってきたら、なんかローカルニュースは都内で見てた全国ニュースと明らかに違うんですよ。全国ニュースは大変だ!不安だ!大変だ!不安だ!ばっかりだったけど、ローカルニュースは地に足をつけた、本当に必要な情報を流してくれてた。思えば震災直後はローカルニュース枠が吹っ飛んで全国ネットの震災番組ばっかりだったからなあ、今にして思えばそれに煽られてたんだな…と思います。

だからね、なんとなく他県の人(特に関東より西の人)が福島に対して感じてる印象もわかるんです。震災直後にあれだけ騒がれて、で、県内はそれでも地道にちょっとずつ試行錯誤を重ねて「普通の生活」にしていった。でもその、地道にちょっとずつ試行錯誤を重ねていったことは、県外にはほとんど伝わってない。それも当たり前の話で、大きなメディアは「普通」とか「順調」とか「地道な経過」とか伝えないから。メディアが伝えたがるのは悲劇や苦労や挫折だから。「ほらこんな悲劇が!わたしたちは問題提議します!」という定型だから。

かと言ってメディアに対して「あの出版社は◯◯だから…」的な判断を下してしまうのもちょっと待った、と思うんです。例えば冒頭に紹介した記事はダイヤモンドオンラインに載ってますが、ダイヤモンド社がその出版物でどんだけアレな言説を撒き散らしてきたか、と思うとちょっと最初はリンク踏むのもためらわれたんですよ。でも読んでみたら物凄く真っ当な記事だった。そして、この記事を書かれた林さんは、ダイヤモンド社は紙の出版物とオンラインでは管轄が違うことや、ダイヤモンドオンラインの担当編集者の方が尽力してくれたことをツイッターで書いている。

担当する「人」が変われば伝える内容も変わる。これね、福島の話だけでなく、自分の個人的な趣味関連のことでも実感してるんだけど、ある出版社でとても充実したありがたい内容の取り上げ方をしてくれたかと思えば、同じ出版社で一目見ただけでソウルジェムが真っ黒になるようなブツを発信されたこともある。だからテレビ局とか新聞社とか出版社とかそういう単位じゃなくて、もっと作っている「人」を知りたいと思うんですよ。あの編集さんは今どの部署で何を担当してるのか、あのディレクターはどんな番組を作ってるのか。そんな風に「人」を知りたいし、「人」で選びたいと思うんです。実際問題として困難ではあると思うんだけどね。それでも、印象に残ったいい記事が署名記事だったら記者さんの名前覚えてるもの。逆に「こいつの記事二度と読まねえ」ってのもね。


脱線した。話を戻して「普通」がメディアで伝わりにくい、という話。じゃあどうすれば「普通」が可視化されるんだろう?と思ったら、やっぱりこれSNSが一番なんじゃないかなあ。それも特にライターとかじゃない「普通の人」の。「ヨークベニマル」とか「マルト」とか「ブイチェーン」とかのローカルスーパーの名前、「洒落たセンスのうすい」とか「石が生きとる生きとる」とか「プリンティング…メッセージ」とかのローカルCM、ローカル駅名やローカルフードや食べログに載ってるローカル名店やなんかで検索してみて、そういうことをツイッターで呟いてる人をそっとフォローするなりリストに入れるなりして見守ればいいと思うの。会社員主婦学生オタクリア充老若男女、いろんな「普通の人」がいるよ。普通の人たちが普通に生活しているよ。そんな、ちょっと昔のツイッターの使い方をしてみるのもいいんじゃないかなーと思います。
あ、あとLINEのニュースで福島民報福島民友をフォローすれば毎日お昼にふくすまのローカルニュースが届くよ。これもオススメ。


ちなみに酪王カフェオレは全国的に有名になってきたからもはやローカルではない。繰り返す、もはや酪王カフェオレはローカルではない。(嘘ですごめんなさい)

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